シングルマザー(母子家庭)が大学無償化(授業料等減免と給付型奨学金)を利用するための方法

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シングルマザー(母子家庭)が大学無償化(授業料等減免と給付型奨学金)を利用するための方法

大学進学時にかかる費用に悩むシングルマザー(母子家庭)の皆さまのために、2020年4月から開始した大学無償化(「高等教育の修学支援新制度」)を利用するための方法についてまとめました。

1.「大学無償化」の概要

    

まず、「大学無償化」と呼ばれているこの制度は、いったいどのようなものなのでしょうか。制度をきちんと理解し、自分がどのくらい支援が受けられるのか、利用するためには具体的にどのようにすればよいのか、を見ていきたいと思います。

1-1.制度の紹介

「大学無償化」と呼ばれているこの制度は、2020年4月に文部科学省によって開始された「高等教育の修学支援新制度」のことです。しっかりとした進路への意識や進学意欲があれば、家庭の経済状況に関わらず、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校に進学できるチャンスを確保できるようにすることを目的としています。

1-2.制度の種類

「大学無償化」には2種類の支援があります。条件を満たすことで、以下2種類の支援をどちらも受けることが出来ます。

・授業料等の減免
・給付型奨学金の支給
    

授業料等減免は、入学金と授業料がそれぞれ免除または減額されます。後ほど詳述しますが、学校種や国公立か私立かにより、減免額の上限が変わってきますので注意が必要です。
給付型奨学金の支給は、学校生活を送るのに必要な学生生活費を賄うための金銭的な支援を受けられるものです。この奨学金は、後に返還が必要な「貸与型」ではなく、返還の必要がない「給付型」ですので。安心して借りられます。貸与型奨学金の中には、支援を受けた金額に加えて利子を払わなけばならないものもあるので、給付型奨学金をもらえるのは大変助かりますね。また、給付型奨学金に関しては、学校種や国公立か私立かだけでなく、どこから通うのか、によってももらえる金額が変わってきます。

2.利用するための条件

    

ここからは実際に「大学無償化」を利用するための条件を見ていきたいと思います。
「大学無償化」では、支援対象となる学生の認定要件が大きく分けて4つ設定されています。

・家計の経済状況に関する要件
・学業成績・学習意欲に関する要件(採用時)
・国籍・在留資格に関する要件
・大学等に進学するまでの期間に関する要件
それぞれ見ていきましょう。

2-1.家計の経済条件に関する要件

始めに、「1.家計の経済状況に関する要件」を見ていきます。
「大学無償化」での経済状況は所得と資産の2つに分けて考えられています。
1つ目の所得の観点において、支援対象になる学生は「住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯の学生」と定められており、住民税の納付額によって受けられる支援額が変わってきます。

支援を受けられる年収の目安と進学は以下の通りです。

 [支援措置の対象となる学生等の認定要件]
項目 住民税非課税 準ずる世帯
第I区分 第II区分 第Ⅲ区分
支援額 満額 2/3 1/3
子1人(本人) 〜約210万円 〜約300万円 〜約370万円
子2人(本人・高校生) 〜約270万円 〜約360万円 〜約430万円
子3人(本人・高校生・中学生) 〜約270万円 〜約360万円 〜約430万円
子3人(本人・大学生・中学生) 〜約290万円 〜約390万円 〜約460万円
 出典:文部科学省 高等教育の修学支援新制度に関わる質問と回答(Q&A)資料5 支援措置の対象となる学生等の認定要件について

 また、給付型奨学金の支援の対象になるのかはJASSO(日本学生支援機構)のホームページで大まかに調べることが出来ます。ぜひこちらも参考にしてください。
 JASSO 進学資金シュミレーター

2つ目の資産の観点では、学生等及びその生計維持者の保有する資産の合計額が以下の基準に該当する必要があります。

  • 生計維持者が1人の場合は、1,250万円未満
  • 生計維持者が2人の場合は、2,000万円未満

シングルマザー(母子家庭)の方々は、基本的には生計維持者が1人ですので、保有する資産が1,250万円未満かどうかが基準になりますね。

また、対象となる資産の範囲は、「現金及びこれに準ずるもの、預貯金並びに有価証券の合計額」と定められており、不動産は資産の対象ではありません。

2-2.学業成績・学習意欲に関する要件

次に、「2.学業成績・学習意欲に関する要件(採用時)」を見ていきます。

採用区分別に、学業成績・学習意欲に関する条件をまとめた表が以下の通りです。

 [学業成績・学業意欲に関する要件(予約採用)]
項目 内容
採用区分 予約採用
学年 高校3年生
申込時期 入学前年度
採用条件 高校2年次(申込)までの評定平均値が
・3.5以上:進路指導等において学習意欲を見る
・3.5未満:レポート又は面談により学習意欲を見る
注意事項 高校認定試験を経て大学等へ進学しようとする者については、高卒認定試験の受験・合格をもって、学習意欲があるものとみなす。
 出典:文部科学省 高等教育の修学支援新制度に関わる質問と回答(Q&A)資料5 支援措置の対象となる学生等の認定要件について

 [学業成績・学業意欲に関する要件(在学採用)]
項目 内容
学年 大学等1年生 大学等2-4年生
申込時期 入学年4月 在学中(毎年)4月
採用条件 次の①〜④までのいずれかに該当すること
①高校の評定平均値が3.5以上であること
②入学試験の成績が入学者の上位1/2以上であること
③高卒認定試験の合格者であること
④学習計画書の提出を求め、学習の意欲や目的、将来の人生設計等が確認できること
次の①〜④までのいずれかに該当すること
①在学する大学等における学業成績について、GPA(平均成績)等が上位1/2以上であること
②次のいずれにも該当すること
a.修得単位数が標準単位数以上であること
b.学習計画書の提出を求め、学習の意欲や目的、将来の人生設計等が確認できること
注意事項 ※秋季入学の場合の申請時期については検討中 ※①又は④に該当する場合であっても、在学中の学業成績等が的確認定の基準において「廃止」に該当する場合には、不採用とする
※災害、傷病その他やむを得ない事由により②aに該当しない場合には、②bに該当することで足りる
 出典:文部科学省 高等教育の修学支援新制度に関わる質問と回答(Q&A)資料5 支援措置の対象となる学生等の認定要件について

これらは、採用時の条件になります。採用後、成績が悪い場合や授業への出席が少なかった場合、支援の打ち切り、場合によっては返還が必要になることもあります。

支援を受けるとはいえ、全ての費用がなくなるわけではありません。そのため、お子様がアルバイト等を行う場合もあると思います。その際には、学業との両立をどのようにしていくのかをきちんと家族で話し合っておくと良いかもしれません。

2-3.国籍・在留資格に関する要件、大学等に進学するまでの期間に関する要件

「3.国籍・在留資格に関する要件」及び「4.大学等に進学するまでの期間に関する要件」に関しては、日本国籍を保有し、現役で大学進学をする方は考慮に入れる必要はありません。

 そのため、ここでの説明は省略しますが、詳細が知りたい方は、文部科学省 「支援措置の対象となる学生等の認定要件」をご確認ください。

3.どれくらいの支援が受けられるのか

それでは、「大学無償化」でどれくらいの支援が受けられるのかを、「入学金・授業料の減免」「給付型奨学金の支給額」の2つに分けて見ていきたいと思います。

なお、以下で記載する表は、住民税非課税世帯が受けられる支援の上限額です。住民税非課税世帯に準ずる世帯は、住民税の納付額に応じて2/3又は1/3になりますので、ご注意ください。

 [授業料等減免の上限額(年額)、昼間制]
項目 国公立 私立
入学金 授業料 入学金 授業料
大学 約28万円 約54万円 約26万円 約70万円
短期大学 約17万円 約39万円 約25万円 約62万円
高等専門学校 約8万円 約23万円 約13万円 約70万円
専門学校 約7万円 約17万円 約16万円 約59万円
 出典:文部科学省 高等教育の修学支援新制度に関わる質問と回答(Q&A)資料1 授業料等減免額(上限)・給付型奨学金の支給額

 [給付型奨学金の給付額(月額)、昼間制・夜間制]※括弧内は生活保護世帯で自宅から通学する人及び児童養護施設等から通学する人への給付額
項目 国公立 私立
自宅 自宅外 自宅 自宅外
大学 29,200円
(33,000円)
66,700円 38,300円
(42,500円)
75,800円
短期大学
高等学校
高等専門学校 17,500円
(25,800円)
34,200円 26,700円
(35,000円)
43,300円
 出典:文部科学省 高等教育の修学支援新制度に関わる質問と回答(Q&A)資料1 授業料等減免額(上限)・給付型奨学金の支給額

4.手続きのスケジュール

さて、ここまでは、「大学無償化」を利用するための条件、具体的にどれくらいの支援が受けられるのかを見てきました。ここからは、実際に手続きする際のスケジュールを見ていきたいと思います。

まずは、令和5年4月(2023年度)に大学等に進学予定の方(現高校3年生、高校卒業後2年を経過していない方)の手続きを見ていきましょう。

 [手続きのスケジュール(予約採用)]
時期 手続き
令和4年(2022年)
(入学前年度)
3〜4月 自分が支援の対象となるか、希望の進学先が対象であるか、調べる※1,※2
4月下旬〜5月 在学中の(過去在籍していた)高校等から関係書類を受け取り、インターネットでJASSOに申し込みを行う
秋ごろ 選考結果の通知(予約採用の採用候補者決定通知)
令和5年 入学時 進学先の大学に対し①採用候補者決定通知の提示、②授業料減免の申請
JASSOに対し進学届の届出
令和5年(2023年)4月or 5月 給付型奨学金の振込開始(4月分から支援されます)
出典: *1 独立行政法人 日本学生支援機構HP
出典:*2 支援の対象となる大学等の一覧
出典: 給付奨学金 早わかりガイド(日本学生支援機構)

現在、高校3年生であるものの、申し込みが間に合わなかった方は、後述する在学採用で「大学無償化」に申し込むことが可能ですので、そちらをご確認ください。

ただし、入学後3ヶ月経過後に申し込みをした人は「入学金」の免除・減額は受けられなくなってしまいますので、利用する意思がある方は、入学後なるべく早く申し込みをするようにしてください。

次に、令和4年(2022年)4月時点で、大学・短大・高等専門学校(4・5年次)・専門学校に在学中の方の手続きのスケジュールを見ていきます。

既に大学等の在学生の方の手続きスケジュールは、前期申込か後期申込かによってスケジュールが変わってきます。手続きの内容は同じですので、次の申込はいつ頃からなのかを理解したうえで、準備を進めましょう。

 [手続きのスケジュール(在学採用)]

時期 手続き
令和4年(2022年) 3〜4月 9〜10月 自分が支援の対象となるか、在学中の学校が対象であるか調べる※1,2
4月下旬〜5月 9〜10月中旬 在学中の学校の窓口から関係書類を受け取る
[給付型奨学金]
インターネットでJASSOに申し込みを行う(合わせてマイナンバーも提出)
[授業料等減免]
学校に申し込みを行う
7月 12月 選考結果の通知(在学採用の採用決定通知)
給付型奨学金の振込開始(4/10月分から支援されます)
出典:*1 独立行政法人 日本学生支援機構HP
出典:*2 支援の対象となる大学等の一覧
出典: 給付奨学金(返済不要) 大学生対象リーフレット(日本学生支援機構)

なお、本記事の情報は日本学生支援機構などのサイトを参考にしておりますので詳しくはそちらも合わせてご覧ください。

5.利用する際の注意事項

最後に、「大学無償化」を利用する際の注意事項を見ていきたいと思います。
 ・世帯所得には本人(学生等)の所得も含まれる
 ・JASSOの貸与型奨学金(無利子)と「大学無償化」の併用で、貸与型奨学金の上限が減額される
 ・「大学無償化」の利用ができない大学等も存在する

1.世帯所得には本人(学生等)の所得も含まれる

シングルマザー(母子家庭)の方の中には、高校生のころからお子様がアルバイトをしていることも多々あるかと思いますが、その場合には注意が必要です。なぜなら「大学無償化」における所得は、本人(学生等)と生計維持者(原則、父母)の合計額によって、基準を満たすかどうか判断されるからです。

あくまで、本人に所得があり住民税を課税される場合ですので、当てはまらない方も多いと思いますが、お子様がアルバイトをしている場合には、確認をしておくようにしましょう。

2.JASSOの貸与型奨学金(無利子)と「大学無償化」の併用で、貸与型奨学金の上限が減額される

「大学無償化」の利用を検討しているシングルマザー(母子家庭)の方々の中には、JASSOが実施している奨学金を受給する予定の方も多いのではないかと思いますが、その場合は注意が必要です。

JASSOが実施している貸与型奨学金には無利子、有利子の2種類ありますが、特に、無利子奨学金を「大学無償化」と併用する場合、無利子奨学金を利用できる上限額が減額されてしまいます。ただし、有利子奨学金については、「大学無償化」と併用する場合でもこれまで通り利用できます。

詳しくは、文部科学省 資料3 授業料等減免・給付型奨学金(新制度)の支援を受けた場合の無利子奨学金の額の調整をご参照ください。

3.「大学無償化」の利用ができない大学等も存在する

非常に便利な「大学無償化」ですが、進学予定の学校や、在学中の学校が、対象校となっている必要があります。

大学・短大は98%、高等専門学校は100%、専門学校は73.2%の学校が対象となっており、ほとんどの方は問題なく利用できるかと思います。しかし「利用できると思っていたのに利用できない!」なんてことにならないように、準備の段階から対象校を確認しておきましょう。

参照:文部科学省「高等教育の修学支援新制度 特設ページ」  

6.まとめ

本記事では、シングルマザー(母子家庭)のみなさまが「大学無償化」を利用するための条件、どれくらいの支援が受けられるのか、をご紹介しました。

今回紹介したものは、あくまで参考であり、世帯の収入、進学先(在学中)の学校など、各ご家庭の状況によって異なってきます。ご紹介したページを参考にして、確認を忘れないようにお願いします。

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