未婚のシングルマザー(母子家庭)が知るべき支援や手当と養育費

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未婚のシングルマザー(母子家庭)が知るべき支援や手当と養育費

未婚のシングルマザー(母子家庭)の方々は、受けられる支援や手当の既婚後のそれとの違い、養育費の支払いや子供の戸籍など不安があるかと思います。今回は、未婚のシングルマザー(母子家庭)の方々の現状や、抱えていらっしゃる悩みについてその解決方法をご紹介します。

1.未婚のシングルマザー(母子家庭)の現状

未婚のシングルマザー(母子家庭)の話をする前提として、現在日本にはどれくらの数の未婚のシングルマザー(母子家庭)がいるのか、そしてその収入はどれくらいなのか、など前提となる情報をまとめてみます。

1-1.未婚のシングルマザー(母子家庭)の数の推移


厚生労働省による調査によると、未婚のシングルマザー(母子家庭)の数は年々増えており、平成28年では母子世帯が全体で1,231.6千世帯いると考えられることから、その内107.1千世帯(8.7%)が未婚のシングルマザー(母子家庭)であることが想定されます。
調査年 総数 死別 離婚 未婚の母 遺棄 行方不明 その他 不明
昭和58年 100.0% 36.1% 49.1% 5.3% N/A N/A 9.5% N/A
昭和63年 100.0% 29.7% 62.3% 3.6% N/A N/A 4.4% N/A
平成5年 100.0% 24.6% 64.3% 4.7% N/A N/A 4.2% 2.2%
平成10年 100.0% 18.7% 68.4% 7.3% N/A N/A 4.2% 1.4%
平成15年 100.0% 12.0% 79.9% 5.8% 0.4% 0.6% 1.2% 0.2%
平成18年 100.0% 9.7% 79.7% 6.7% 0.1% 0.7% 2.3% 0.7%
平成23年 100.0% 7.5% 80.8% 7.8% 0.4% 0.4% 3.1% N/A
平成28年 2060
(100.0%)
165
(8.0%)
1637
(79.5%)
180
(8.7%)
11
(0.5%)
8
(0.4%)
41
(2.0%0
18
(0.9%)

出典:平成28年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告

1-2.未婚のシングルマザー(母子家庭)の平均就労収入と年間収入

次に、その未婚のシングルマザー(母子家庭)の平均年間就労収入(仕事を通じた収入)は177万円と全シングルマザー(母子家庭)の平均より23万円(月あたり2万円弱)低い。内訳をみると、未婚のシングルマザー(母子家庭)においては、その年間就労収入が200万円未満の世帯が65.4%をしめ、7割近い。

[母子世帯の母の年間就労収入の構成割合 平成28年]
総数 100万円未満 100〜200万円未満 200〜300万円未満 300〜400万円未満 400万円以上 平均年間就労収入
総数 1,464
(100%)
327
(22.3%)
524
(35.8%)
321
(21.9%)
157
(10.7%)
135
(9.2%)
200万円
死別 110
(100%)
32
(29.1%)
37
(33.6%)
18
(16.4%)
16
(14.5%)
7
(6.4%)
186万円
離婚 1,170
(100%)
245
(20.9%)
417
(35.6%)
269
(23.0%)
125
(10.7%)
114
(9.7%)
205万円
未婚 133
(100%)
36
(27.1%)
51
(38.3%)
24
(18.0%)
12
(9.0%)
10
(7.5%)
177万円

出典:平成28年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告

さらに、その就労収入に、生活保護法に基づく給付、児童扶養手当等の社会保障給付金、別れた配偶者からの養育費、親からの仕送り、家賃・地代などを加えた全ての収入の額を加えた、平均年間収入を見てみます。こちらもシングルマザー(母子家庭)全体の平均が348万円なのに対し、未婚のシングルマザー(母子家庭)は332万円と低くなっています。
就労収入との差で見ると155万円となっており、社会保障給付金などが非常に重要であることもわかります。

[母子世帯の母の年間収入の構成割合 平成28年]
総数 100万円未満 100〜200万円未満 200〜300万円未満 300〜400万円未満 400万円以上 平均年間就労収入
総数 1,179
(100%)
73
(6.2%)
205
(17.4%)
309
(26.2%)
229
(19.4%)
363
(30.8%)
348万円
死別 93
(100%)
8
(8.6%)
19
(20.4%)
17
(18.3%)
18
(19.4%)
31
(33.3%)
356万円
離婚 939
(100%)
52
(5.5%)
154
(16.4%)
253
(26.9%)
191
(20.3%)
289
(30.8%)
350万円
未婚 100
(100%)
5
(5.0%)
22
(22.0%)
29
(29.0%)
16
(16.0%)
28
(28.0%)
332万円

出典:平成28年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告

1-3.未婚のシングルマザー(母子家庭)の養育費の受け取り状況


次に、その年間収入の中でも大きい部分を占める、養育費についてみてみます。厚生労働省の平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告によると、子供の養育費はシングルマザー(母子家庭)で月平均43,707円となっており、年間にすると約50万円の金額となっています。先ほどの年間就労収入や年間収入から見ると大きな金額です。
一方で、未婚のシングルマザー(母子家庭)で養育費の受け取り状況を見ると、受けたことがない未婚のシングルマザー(母子家庭)が79.4%と5人のうち4人が受け取っていない状況であることがわかります。

[母子世帯の母の養育費の受給状況]
総数 離婚 未婚
総数 1,817
(100.0%)
1,637
(100.0%)
180
(100.0%)
現在も受けている 442
(24.3%)
428
(26.1%)
14
(7.8%)
過去に受けたことがある 281
(15.5%)
264
(16.1%)
17
(9.4%)
受けたことがない 1,017
(56.0)%
874
(53.4%)
143
(79.4%)
出典:平成28年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告

2.未婚のシングルマザー(母子家庭)と、既婚(離婚、死別など)のそれの受けられる支援や手当の違い

全体を理解したところで、未婚のシングルマザー(母子家庭)として生活していくときの収入、節約、資産運用などのやりくりをどのようにしていけばよいでしょうか。未婚のシングルマザー(母子家庭)としての生活における生活費や収入、お金のやりくりについては別記事ございますので以下をご覧ください。こちらで全体を理解することができます。

・シングルマザー(母子家庭)の生活費と収入の平均と内訳
・シングルマザー(母子家庭)におすすめの資格ランキング
・シングルマザー(母子家庭)の目標貯金額と貯金方法
・シングルマザー(母子家庭)の仕事の選び方と探し方
・シングルマザー(母子家庭)が利用できる手当・支援制度のまとめ
・シングルマザー(母子家庭)のお金の不安を取り除くお金のやりくり

なお、今回は上記記事で紹介する援助や手当などにつき、未婚のシングルマザー(母子家庭) の場合に異なるポイントがありますのでその点をお伝えします。

寡婦控除をご存知でしょうか。国税庁ホームページの定義によると、寡婦控除とは、納税者が一般の寡婦の場合、一定の金額の所得控除を受けることができるもので、税金の支払いを抑えられる制度です。寡婦とは以下をさすのですが、現状、未婚のシングルマザー(母子家庭)が対象になっていません。

(1)夫と死別し、若しくは夫と離婚した後婚姻をしていない人、又は夫の生死が明らかでない一定の人で、扶養親族がいる人又は生計を一にする子がいる人。この場合の子は、総所得金額等が38万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族となっていない人に限られる。
(2)夫と死別した後婚姻をしていない人又は夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人。

ここ数年、婚姻に寄らないで生まれた子を持つ未婚のひとり親を寡婦(寡夫)に加えて欲しいとの要望が厚生労働省などから毎年出されていますが、この要望はまだ実現していません。自治体では利用者の所得によって保育所の保育料などが決まることから、寡婦(夫)控除が適用されないことで所得が下がらず、不利な条件での利用をせざるを得ないケースがあります。

ただ、近年は未婚のシングルマザー(母子家庭)に「寡婦(夫)控除のみなし適用」を採用することで、保育料の軽減などを実現しているところが増えており、上記のようなケースは解消に向かっています。詳しくは、お住いの自治体に問い合わせをしてみるといいでしょう。
例:神奈川県横浜市 

3.未婚のシングルマザー(母子家庭)における認知(養育費や戸籍)の問題

次に養育費の問題。
「1-3.未婚のシングルマザー(母子家庭)の養育費の受け取り状況」において記載しましたが、未婚のシングルマザー(母子家庭)の場合、養育費を受け取っていない方々が約80%にものぼります。それぞれ事情はあるかと思いますが、受け取ることで経済的な助けとなるのは確かなので、養育費の受け取りについて整理します。

養育費を受け取るためのステップですが、①認知をする、②養育費を請求する、③養育費を受け取ると大きく3つに別れますのでそれぞれについて記載します。

3-1.未婚のシングルマザー(母子家庭)による認知手続き

子供の父親から養育費を受け取るには認知が必要です。
wikipediaによると、認知とは「法概念としては嫡出でない子(非嫡出子)について、その父又は母が血縁上の親子関係の存在を認める旨の観念の表示をすることをいう。法律上、当然には親子関係が認められない場合について、親子関係を認める効果がある。」ものです。嫡出子とは結婚している男女間に生まれた子供、非嫡出子とは結婚していない男女間に生まれた子供を言います。
そして、非嫡出子である場合、父親から認知を得ることで、養育費を受け取れるようになるだけではなく、父親の相続人になれるといったメリットがあります。

では、養育費のための認知はどのように進めるのでしょうか。まず認知には任意認知と強制認知の2種類があります。任意認知は父親が任意で認知をするもので、具体的には、届け出による方法と遺言による方法の2通りがあり、届け出による場合の手続き方法は以下の通りです。
・届け出期間:特に定め無し
・届け出人:認知をする父親
・届け出場所:認知する父の本籍地、届け出人の所在地、認知される子供の本籍地
・必要な書類:父親の本人確認書類、認知届、印鑑、戸籍全部事項証明書(父親・子供)、認知される人の 承諾書(成人の子を認知する場合)
出典:京都府宇治市ホームページ

これで認知が行われれば、次は②のステップ養育費を請求するに入ります。
ただし、相手の父親が認知を認めない場合もあります。その場合は、法的な手続きを通じて強制的に認知をさせることができます。これが強制認知(裁判認知)です。
ただ、調停前置主義という考え方がありますので、まずは家庭裁判所にまず認知調停を申し立て、調停の場で父親と母親が子供の認知について話し合いを行う必要があります。認知調停の手続きは以下の通りです。
・申立人:子供、法定代理人(未婚のシングルマザー(母子家庭)ご本人)
・申立先:相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所
・申立に必要な費用:収入印紙1,200円
・必要な書類:申立書、戸籍謄本(子供、父親)
・プロセス:申し立てから1-2ヶ月後調停による話し合いを、平日に1-2時間かけて行う
出典:裁判所ホームページ

なお、調停が不成立の場合、認知の訴え(人事訴訟)を、家庭裁判所に起こすことができます。基本的には民事訴訟と同様の手続きで進みます。
・原告:子供、法定代理人(未婚のシングルマザー(母子家庭)ご本人)
・被告:父親
・管轄:原告または被告の住居地を受け持つ家庭裁判所
・必要書類:訴状、戸籍謄本、主張を裏付ける資料 など
・プロセス:訴状提出後、口頭弁論にて主張を述べ証拠の提出などを行い、最終的には判決
・費用:訴状に貼付する訴え提起手数料 13,000円、送達用の郵券5,000円程度、DNA鑑定費用(これは行うべきでしょう、これで親子関係が認められれば勝訴になる見込みが高い)、弁護士費用(依頼する場合)
・費用負担:訴訟費用(DNA鑑定費用、収入印紙などの手数料、郵送料や旅費など)は裁判に負けたものが負担。ただし、弁護士費用などはその訴訟費用に含まれない。
参考:人事訴訟手続き

ここまでのプロセスを通じて、認知がされると次に3-2の養育費請求の手続きに入ります。

3-2.未婚のシングルマザー(母子家庭)による養育費請求手続き・受け取り

次に、認知後に養育費を決めるプロセスに入ります。金額はまずは話し合いで決めます。
養育費は、先ほどの例でシングルマザー(母子家庭)で月平均43,707円とありました。ただ、これはご家庭の事情により大きく異なるかと思います。そこで、東京・大阪家庭裁判所で養育費を検討する際、参考として利用されている養育費算定表がありますので、こちらをご覧になってみてください。父親の年収と母親の年収、子供の年齢でその養育費が定義されています。

次にいつの分から、いつまで払ってもらうかです。
いつの分から、については原則として養育費の支払いを求めた時点からです。ただし、子供を出産してから認知し養育費の支払いを求めるまでに相当な期間が経過することは十分に考えられます。過去の裁判例ですと、出生時からの養育費の支払いを命じた場合もあります(大阪高等裁判所平成16年5月19日決定)。
次に何歳まで支払ってもらうかですが、これは養育費の定義に立ち戻ってみましょう。養育費とは、子どもを監護・教育するために必要な費用です。 一般的にいえば、未成熟子(経済的・社会的に自立していない子)が自立するまで要する費用で、生活に必要な経費、教育費、医療費などです。(養育費相談支援センターホームページより)
wikipediaによれば、養育費の支給期間は法律で決められている訳ではない。基本的に日本国憲法で定めている成人とみなされる年齢20歳まで養育費を支払う例が多い(外国の場合は外国の法律で成人とみなされる年齢まで)。当事者との約束で22歳まで支払われる例もあるとのこと。

これら内容に合意したら公正証書の形で文書にしておきましょう。養育費に合意しても、なんかしらの理由などで父親が支払わない場合、強制執行ができるという効力があります。
新橋公証役場のホームページでは、「公正証書とは,公平な立場の公証人が,当事者から伺った内容に法律的な検討を加えて作成した公文書です。特に,一定の金銭を払うことを約束し,その内容が「強制執行認諾文言」という文言とともに公正証書に記載されると,もし約束が守られない場合には,裁判所の判決がなくとも,公正証書によって強制執行(差押え)をすることができるという強い効力が与えられています。」との定義があります。
話し合いが合意したら、まずは最寄りの公証役場に行ってみてください。

上記プロセスで進めばいいですが、養育費の話し合いそのものも難航する場合、話し合いそのものを父親が拒否する場合なども考えられます。その場合は、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てます。
・申立人:未婚のシングルマザー(母子家庭)ご自身
・申立先:相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所
・申立に必要な費用:収入印紙1,200円、連絡用の郵便切手
・必要な書類:申立書、戸籍謄本(子供)、申立人の収入に関する資料(源泉徴収票写し、給与明細写し、確定申告書写し、非課税証明書写し等)
出典:裁判所ホームページ

養育費請求調停が不成立になった場合、自動的に審判に移行します。審判では裁判官が主体となって審判手続きが進められます。そして審問が行われ、父母が裁判官から求められる説明事項について説明し、場合によっては資料提出を求められる場合もあります。
そして家庭裁判所が父母の主張や提出資料の内容を考慮した上で、その養育費の金額や支払い方法などを判断し、父母に書面で告知します。審判が確定した場合,支払いに応じないケースにおいては地方裁判所で強制執行の手続きをとることもできます。なお、強制執行の手続きには直接強制と間接強制があります。
直接強制は、義務者(この記事においては養育費を支払う義務のある父親)の財産(不動産・債券など)を差し押さえて、その財産の中から支払いを受けるための手続きです。差し押さえは、通常の場合支払い期限が過ぎても支払われていな分についてのみすることができます。しかし、養育費については、未払い分があれば、その分だけに限らず、将来権利者に支払われる予定の、まだ支払い期限が来ていない分(将来分)についても差し押さえをすることができます。
次に間接強制ですが、こちらは、債務を履行しない義務者に対し、一定の期間内に履行しなければその債務とは別に間接強制金を課すことを警告した決定をすることで義務者に心理的圧迫を加え、自発的な支払いを促すものです。養育費についてはこの制度も利用できます。
こちらは、地方裁判所に詳しくはお問い合わせください。
出典:裁判所ホームページ

また、今回の記事の対象とした養育費について全般は、厚生労働省が(社)家庭問題情報センターに委託して行う養育費相談支援センターがあり、養育費でお困りの方がいらしたら、まずこちらに連絡してみてください。

4.まとめ

未婚のシングルマザー(母子家庭)が知るべき手当・援助や養育費のことについてまとめました。
未婚のシングルマザー(母子家庭)は増えてきており、現在日本に107.1千世帯ほどあると想定され、シングルマザー(母子家庭)全体の平均収入から見ても少なく、お金の面でとても苦労されています。
手当・援助については、未婚だから受けられないと行ったケースは少なくなってきているものの、養育費は未婚のシングルマザー(母子家庭)の場合5人に4人が受け取っていない現状がありました。そこでそれを受け取るために必要なステップをご紹介しています。
ただ、現在養育費を受け取っていない方々はそれなりの事情があるケースもあると思います。まずは公的機関や、当社サイトで同じ悩みを抱えるシングルマザー(母子家庭)の方々に聞いてみて(当社サービスの利用は無料です)、それから活動を考えてみてください。

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