児童扶養手当のケース別シミュレーション | 実際いくらもらえるの?

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児童扶養手当のケース別シミュレーション | 実際いくらもらえるの?

厚生労働省が2016年に行った全国ひとり親世帯等調査によると、児童扶養手当の受給状況は、「受給している」が母子世帯の母で73%、父子世帯の父で51.5%となっています。

つまり、ひとり親全体にすれば、半数以上が児童扶養手当を受け取っているということです。

今回の記事では、児童扶養手当がどのような制度なのかを説明すると共に、これからシングルマザー(母子世帯)やシングルファザー(父子世帯)になる方が、実際に児童扶養手当でどれくらいの金額を受け取れるのかについて具体的に解説し、シミュレーションします。

計算の方法についてもご紹介しますので、なるべく詳しく金額を知りたい方は給与明細や確定申告書をご用意ください。



1.もそも児童扶養手当とは?

そもそも「児童扶養手当」とはどのような制度なのでしょうか?

厚生労働省によると「離婚によるひとり親世帯等、父又は母と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため、当該児童について手当を支給し、児童の福祉の増進を図る」とあります。

法律に基づいた文章のため少し難しいですが、簡単に言えば、ひとり親家庭の生活の安定と自立を支援するために支給される手当のことです。

似ている公的制度として児童手当がありますが、児童手当と児童扶養手当は全く違う制度となります。
児童扶養手当があくまでひとり親世帯に支給されるのに対し、児童手当はふたり親世帯にも一律で支給されるからです。

現在この記事を読んでいる方で「児童」と名の付く制度を1つしか利用していない方は、この2つのうちどちらかの制度を利用していない可能性がありますのでご確認ください。 出典厚生労働省 児童扶養手当について

1-1.手当を受けることができる人

児童扶養手当を受給できるのは、18歳になった後の最初の3月31日までの間にある児童を養育している方(養育者)です。18歳という年齢制限に関しては、政令で定められた一定の障害の状態にある児童であれば、20歳まで受け取れます。

ここでいう養育者とは、父や母に限らず、父母に代わって子どもを育てている祖父母等の親戚も支給対象です。

1-2.手当を受けられない人

以下に当てはまる方は、児童扶養手当の受給対象外となります。

● 児童または請求者の住所が日本国内にない時
● 児童が里親に委託されている時
● 児童が母子生活支援施設等を除く児童福祉施設等に入所している時
● 政令で定める障害の状態にある場合を除き、児童が父又は母と生計を同じくしている時
● 児童が父又は母の配偶者と生計を同じくしている時

この場合の配偶者には事実婚や同棲も含まれるため、生計を同じくしているパートナーがいる場合は、結婚していなくても児童扶養手当は受けられません。

同棲をしていないとしても、金銭的な援助を受けている場合、事実婚とみなされる可能性があることにもご注意ください。

1-3.対象となる児童

埼玉県さいたま市の場合、児童扶養手当が受けられるのは以下のいずれかに当てはまる児童を養育している父母又は養育者となります。

1. 父母が離婚した児童
2. 父又は母が死亡した児童
3. 父又は母が一定以上の障害にある児童
4. 父又は母の生死が明らかでない児童
5. 父又は母が引き続き1年以上遺棄している児童
6. 父又は母が裁判所からの保護命令を受けた児童
7. 父又は母が引き続き1年以上拘禁されている児童
8. 母が婚姻によらないで懐胎した児童
9. 5〜8に該当するかどうかが明らかでない児童

各市区町村によって、支給対象となる児童が異なる場合がありますので、対象となるかどうかはお住まいの地域にご確認ください。

出典さいたま市 児童扶養手当

1-4.児童扶養手当の受け取り方

手続き方法については、市役所等の窓口に必要書類を提出して申請するのが一般的です。その際の必要書類は、以下となります。

● 請求者及び児童の戸籍謄本(外国籍の方は該当事由の分かる公的書類)
● 昨年度の住民税課税証明書
● 児童扶養手当障害認定診断書(父母若しくは児童が障害を有するとき)
● 個人番号(マイナンバー)がわかるもの
● 申請者の身元を確認できるもの
● 請求者本人の銀行・信用金庫等の普通預金通帳等

この必要書類は新宿区の例となります。各自治体や申請者によって必要になる書類が異なりますので、まずはお住まいの自治体にご確認ください。

出典新宿区 児童扶養手当

2.児童扶養手当はいくらもらえるの?

ここまでは児童扶養手当がどのような制度なのかご説明しました。では実際に、児童扶養手当を申請し受給することになった場合、どれくらいもらえるのか解説します。

2-1.全部支給と一部支給がある

2児童扶養手当で受給できる金額は、前年度の所得によって全部支給か一部支給か支給対象外となるかが変わります。さらに手当額は、全国消費者物価指数の変動に応じて毎年改定されています。

所得金額などの計算方法については後述しますので、まずは児童扶養手当で受給される金額をご覧ください。
以下の表は、2022年度の手当額です。

全部支給 一部支給
児童1人 43,070円 43,060円〜10,160円
児童2人目の加算額 10,170円 10,160円〜5,090円
児童3人目以降の加算額 6,100円 6,090円〜3,050円

出典厚生労働省 児童扶養手当について

子どもが1人で、前年度の所得から計算して全部支給となった場合、月額43,070円が支給されることになります。

児童扶養手当は月額での支給となりますが、支払期日は現在1月、3月、5月、7月、9月、11月なので2ヶ月に1度手当が支給されます。

子どもの数に応じて支給額が加算されていき、子どもの数による制限はありません。

2-2.障害基礎年金を受け取っている方へ

これまで、障害基礎年金の全体額が児童扶養手当の額を上回る場合、児童扶養手当を受給することができませんでした。

しかし2021年3月から制度が見直され、障害基礎年金の「子の加算額分」を児童扶養手当の額が上回る場合、その差額を児童扶養手当として受給できるようになりました。

ですから、これまで障害基礎年金を理由に児童扶養手当を申請していなかった方は、現在は児童扶養手当を受給できる可能性があります。

障害基礎年金を受け取っていて、児童扶養手当の支給対象に当てはまる場合、手当を受け取れるかどうか、まずはお住まいの自治体にご確認ください。

出典厚生労働省 ひとり親のご家庭の方へ、大切なお知らせ

3.児童扶養手当は所得により支給額が変わる

先述した通り、児童扶養手当は前年度の所得によって支給される金額が変わります。

さらに具体的に言うとこの手当には所得制限があり、一定以上の所得があると一部支給になるか支給対象外となり手当を受け取ることができなくなってしまいます。

3-1.児童扶養手当の所得制限

現在、所得制限限度額は以下の通り設定されています。

扶養親族の数 全部支給(本人) 一部支給(本人) 孤児等の養育者 配偶者・扶養義務者
収入額 所得額 収入額 所得額 収入額 所得額
0人 1,220,000 490,000 3,114,000 1,920,000 3,725,000 2,360,000
1人 1,600,000 870,000 3,650,000 2,300,000 4,200,000 2,740,000
2人 2,157,000 1,250,000 4,125,000 2,680,000 4,675,000 3,120,000
3人 2,700,000 1,630,000 4,600,000 3,060,000 5,150,000 3,500,000
4人 3,243,000 2,010,000 5,075,000 3,440,000 5,625,000 3,880,000
5人 3,763,000 2,390,000 5,550,000 3,820,000 6,100,000 4,260,000

例えば、扶養親族である子どもが1人の場合、前年度の収入額が160万円未満であれば児童扶養手当の全部支給である月額43,070円を受けられます。

子どもが1人で、前年度の収入額が160万円以上365万円未満の場合、一部支給となりますので10,160円〜43,060円を受け取ることが可能です。
しかし、前年度の収入額が365万円以上の場合、一部支給の所得制限限度額を超えてしまうため手当の支給を受けることはできません。

3-2.「所得」の計算方法

では「所得」とは、どのようにして求めるのでしょうか。以下の計算式は児童扶養手当における所得の計算例です。

所得額 = 年間収入 − 必要経費(給与所得控除額等)+ 養育費の80% − 100,000円(基礎控除引き上げ相当金額) − 80,000円(社会・生命保険料相当額) − 諸控除
※基礎控除引き上げ相当金額は、給与所得または公的年金等に係る所得額が10万円以上ある場合に適用

自営業の方は、確定申告書にある「所得金額の合計」に養育費や控除額を引いて計算することになります。
会社から給料を受け取っている方は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」に養育費や控除額を引いて所得を計算します。
「諸控除」に関しては、例えば以下のようなものがあります。

税法上の控除 控除額
障害者控除 270,000円
特別障害者控除 400,000円
勤労学生控除 270,000円
雑損控除・医療費控除・小規模企業共済等掛金控除 控除相当分
肉用牛売却による事業所得 所得相当分
配偶者特別控除 控除相当分

出典板橋区 児童扶養手当

この諸控除に関しては、各自治体によって異なりますのでお住まいの市役所等にご確認ください。
この他にも、所得に対する控除額が変更される可能性もあります。

ひとり親waccaの掲示板には以下のような相談がありました。
「児童扶養手当の所得の計算って来年度変更ありますか?」
所得控除の計算が変わったようで、去年と同じ収入なのに、所得が上がってしまいました。児童扶養手当が減額されそうです。 (続きは以下を参照)
出典: ひとり親wacca 心のヘルプ

この相談では、結論児童扶養手当の減額はありませんでしたが、情勢によっては今後減額の可能性も考えられます。

4.ケース別シミュレーション

ここからは、具体的なケースをもとにどれくらいの児童扶養手当をもらえるのかのシミュレーションをご紹介します。

所得が全部支給の所得制限限度額以下の場合、子どもの人数によって加算すればすぐに手当額がわかります。

全部支給の所得制限限度額を超え、一部支給の限度額未満の場合は、以下の計算式によって手当額を求めることが可能です。
1人目
43,060 − (所得 − 全部支給所得制限限度額)× 0.0230070(所得制限係数)
2人目
10,160 − (所得 − 全部支給所得制限限度額)× 0.0035455(所得制限係数)
3人目
6,090 − (所得 − 全部支給所得制限限度額)× 0.0021259(所得制限係数)

所得制限係数を掛ける部分については、10円未満を四捨五入することになるのでご注意ください。

この記事では3つのケースでのシミュレーションをご紹介しますが、さらに詳しく知りたい方は、手当額を試算できるシミュレーションサイトをご利用ください。
参考: ジョイナス.ナゴヤ 児童扶養手当試算

4-1.子ども2人で所得が200万円の場合

まずは子どもが2人で、前年度の所得が200万円というケースです。

所得については、掲示板にあった以下の投稿を参考にしています。

「大学資金」
子供が大学に行きたいと言っています.....(続きは以下を参照)私の年収は200万円ほどで、非課税世帯です。貯金はありません。
出典:ひとり親wacca 心のヘルプ

そして、厚生労働省が行った平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告によると、シングルマザー(母子世帯)の世帯人員で最も多いものが3人だったので、子供2人で所得が200万円のケースを想定しています。

子どもが2人の場合、全部支給の所得制限限度額は125万円となり、一部支給の所得制限限度額が268万円となりますので、このケースでは一部支給が受けられます。 この場合の計算式は以下の通りです。

1人目
43,060 − (2,000,000 − 1,250,000)× 0.0230070 = 25,800
2人目
10,160 − (2,000,000 − 1,250,000)× 0.0035455 = 7,500

このケースの場合1人目で25,800円、2人目で7,500円となりますので、合計で月額33,300円が児童扶養手当として支給されます。

4-2.子ども1人で所得が180万円の場合

このケースの場合、子どもが1人の場合の全部支給の所得制限限度額は87万円なので、全部支給を受けることはできません。

しかし、一部支給の所得制限限度額が230万円なので、一部支給を受けることができます。 計算式に当てはめると、以下の結果となります。

1人目
43,060 − (1,800,000 − 870,000)× 0.0230070 = 21,660

つまりこのケースでは、月額21,660円が支給されることになります。

4-3.子ども1人で所得が240万円の場合

このケースでは、前年度の所得が240万円。つまり、毎月20万円の給料を得ている家庭のモデルケースです。

子どもが1人の場合、全部支給の所得制限限度額は87万円、一部支給の所得制限限度額が230万円と設定されています。
ですから、このケースでは一部支給の限度額も超えてしまっているため、児童扶養手当の支給対象外となり、手当を受けることができません。

5.児童扶養手当受給における注意点

今現在この制度を利用している方でも、突然手当が停止されてしまうこともあります。ここからは、そういった児童扶養手当の注意点についてご説明します。

5-1.支給額が2分の1になる場合がある

児童扶養手当の支給開始から5年または、支給要件に該当した日から7年のいずれか早い方が経過すると、支給額が2分の1となります。

ただし、認定請求をした日に3歳未満の児童がいる場合は、その児童が3歳に達した月の翌月から5年を経過した時に2分の1となります。

これは児童扶養手当の目的が、あくまでひとり親家庭の生活の安定と自立の支援にあるからです。これを児童扶養手当の一部支給停止と呼びます。

しかし、ご安心ください。一部支給停止適用除外事由に当てはまる場合は、5年等が経過した後も支給額を満額で受給することが可能です。

適用除外事由は以下の通りです。
● 受給資格者が働いている場合または求職活動等の活動を行っている場合
● 受給資格者が障害の状態にある場合
● 受給資格者が疾病や要介護状態等の理由により就業が困難な場合
● 受給資格者が児童や親族の介護を行う必要があり就業が困難な場合

つまり、仕事をしているか、仕事を探しているか、仕事をしたくてもできないという場合においては支給額が減額されることはありません。
この減額措置の対象となる方は、約2ヶ月前に自治体から通知が届きます。期日までに通知書に記載されている書類を提出することで、今まで通り満額で手当を受けることが可能です。

5-2.児童扶養手当が支給停止される場合

この制度の支給要件は、これまでにもご紹介してきた通り児童の年齢と養育者の前年度の所得によって判断されます。

例えば、現在子どもと2人で暮らしていて児童扶養手当を受給しているケースで、これから実家に帰って両親と共に暮らそうと考えている場合には注意が必要です。
児童扶養手当は受給資格者の所得だけではなく、扶養義務者の所得にも制限限度額が設定されているためです。

つまり、子どもにとっての祖父母と同居して、その祖父母に一定以上の所得がある場合は手当が支給停止されることがあります。

実際にひとり親waccaの掲示板にて、児童扶養手当が貰えなくなるという相談もあります。
「児童扶養手当」
今年から児童扶養手当が貰えなくなります。不安でたまりません。(続きは以下を参照)
出典: ひとり親wacca 心のヘルプ

支給停止されるかどうかはケースバイケースとなりますので、まずはお住まいの自治体にご相談ください。

関連記事: 親と同居してるシングルマザー(母子家庭)が児童扶養手当を受けられるパターンと失敗例

5-3.申請タイミングで計算する年度が異なる

これまで、児童扶養手当は前年度の所得によって支給額が変わると解説してきました。しかし、これから手当を申請する方は少し注意が必要となります。

なぜなら、申請するタイミングによって、前年度の所得を参考にするのか前々年度の所得を参考にするのかが異なるからです。
具体的に言えば、1月から9月に申請する場合は前々年度の所得から算出され、10月から12月に申請する場合は前年度の所得から算出されます。

5-4.毎年現況届を提出する必要がある

手当を受けることが認められた方でも、毎年8月の初めごろに届く現況届を8月中に自治体に提出しなければなりません。

もし提出することができなければ、11月以降の手当が差し止めとなってしまいます。仮に2年間現況届を提出しなかった場合、支給を受ける権利が消滅してしまい、今後手当を受けることができなくなってしまうためご注意ください。

現況届を提出する際には、以下のような書類が必要になります。
● 児童扶養手当現況届の通知
● 印鑑
● 児童扶養手当証書
● 児童扶養手当一部支給停止適用除外事由届書

これらの必要書類は各自治体によって異なりますので、通知書などをご確認ください。 現況届は自治体が用意している窓口で提出することも多く、担当者に生活の状況などを聞かれることもあります。


6.まとめ|手当額は前年度の所得から算出される

ここまで、児童扶養手当と具体的なケース別のシミュレーションをご紹介してきました。

この制度は前年度の所得によって支給額が異なり、所得には一定の制限限度額が定められています。
申請するタイミングや同居している扶養義務者の所得などによっても支給額が変わるため、まずはお住まいの自治体に詳細をご確認ください。

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