親と同居してる母子家庭が児童扶養手当を受けられるパターンと失敗例

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親と同居してるシングルマザー(母子家庭)が児童扶養手当を受けられるパターンと失敗例

現在は、シングルマザー(母子家庭)の方々を支援するために、国や地方自治体がさまざまな手当や支援制度を用意しています。

家庭を1人で支えなければならないシングルマザー(母子家庭)にとって、それらの公的支援を利用しない手はありません。

今回は、それら公的支援制度を親と同居していても受けられるのかについてご紹介します。特に公的支援制度の中でも最もポピュラーな、児童扶養手当と気になるその他の制度のケースについて見ていきましょう。



1.児童扶養手当とは?

    

そもそも児童扶養手当とは、離婚によるひとり親世帯等、父又は母と生計を同じくしていない子どもが生活する家庭の生活の安定と自立を目的として支給される公的支援制度のことです。

この手当は18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子どもを監護する母又は父、もしくは祖父母等の養育者に対して支給されます。障害児の場合は20歳未満までは受給することが可能です。

児童扶養手当は、2010年までシングルマザー(母子家庭)しか受給することができませんでしたが、現在はシングルファザー(父子家庭)も対象となっています。手当額は2022年現在、以下の通りとなっています。

全部支給 一部支給
月額 児童一人目 43,160円 43,150〜10,180円
加算額 児童2人目 10,190円 10,180〜5,100円
加算額 児童3人目以降1人につき 6,110円 6,100〜3,060円
出典児童扶養手当について

この手当額は、物価の変動等に応じて毎年改訂されますのでご注意ください。

1-1.児童扶養手当の給付対象者

この制度は、次のいずれかに該当する子どもについて、母・父又は養育者が監護等している場合に支給されます。

● 父母が婚姻を解消した子ども
● 父又は母が死亡した子ども
● 父又は母が一定程度の障害の状態にある子ども
● 父又は母が生死不明の子ども
● 父又は母が1年以上遺棄している子ども
● 父又は母が裁判所からのDV保護命令を受けた子ども
● 父又は母が1年以上拘禁されている子ども
● 婚姻によらないで生まれた子ども
● 棄児などで父母がいるかいないかが明らかでない子ども

これらの他にも、お住まいの市区町村によって支給要件がありますので、詳細は各自治体までお問合せください。

支給要件を満たしていても、下記のいずれかに当てはまる場合は児童扶養手当が支給されないことがあるのでご注意ください。
● 申請者や子どもが日本国内に住所がないとき
● 子どもが児童福祉施設等に入所しているとき
● 子どもが里親に委託されているとき
● 父又は母の配偶者に養育されているとき
● 父又は母が婚姻していなくても、事実上婚姻の関係にあるとき
出典北区 児童扶養手当

2.親と同居しても児童扶養手当を受けられる?

ではここからは、親と同居しているシングルマザー(母子家庭)でも、児童扶養手当を受けられるのかについてご紹介します。
結論から言えば、親と同居していても受給できる場合がありますが、児童扶養手当の所得制限があり、各自治体の判断次第では支給されないかもしれません。

2-1.同居家族の所得が重要

実家暮らしで親と同居しているから児童扶養手当を受けられないわけではなく、申請することは可能です。

しかし、同居している家族(扶養義務者)の所得が児童扶養手当で定められている所得制限額を超えてしまうと、手当の全部又は一部を受給できなくなってしまいます。

扶養義務者とは、申請者と生計を共に維持する直系血族と兄弟姉妹が含まれます。直系血族とは以下でまとめた人たちのことです。
● 曽祖父母
● 祖父母
● 父母
● 子
● 孫
● 曾孫

この所得制限額は、扶養親族等の数が増えれば制限額が上がります。
なお、この場合の「同居している家族の所得」は、例えばシングルマザー(母子家庭)の親だけではなく祖父母・兄弟姉妹を含めて、最も所得が高い人の金額で判断されます。世帯の所得を合算して判断するわけではありませんので、ご注意ください。
例えば、実家であなた・子ども・父・母・兄の5人で暮らしているとして、父の所得が最も高く、その所得額が制限額以上であれば児童扶養手当を受給することができません。

所得制限の詳しい内容は、 3-1.同居している扶養義務者の所得が制限額未満の時をご覧ください。

2-2.養育費を貰っている場合は注意

あなたに受給資格があり、同居している家族の所得が制限額以下であったとしても、養育費について注意しなければなりません。なぜなら養育費を貰っている場合、その8割相当額が収入に加算されるからです。

所得額の計算例は以下となっています。

所得額=年間収入ー必要経費(給与所得控除額等)+養育費ー100,000円(基礎控除引き上げ相当金額)ー80,000円(社会・生命保険料相当額)ー諸控除(※)
※諸控除には、以下のようなものがあります。

控除額
老人扶養親族(申請者) 100,000円
老人扶養親族(配偶者・扶養義務者・養育者) 60,000円
老人控除対象配偶者(申請者または養育者) 100,000円
特別障害者控除 400,000円
障害者控除 270,000円
特定扶養親族および控除対象扶養親族(申請者または養育者) 150,000円
勤労学生控除 270,000円
寡婦控除(申請者を除く) 270,000円
ひとり親控除(申請者を除く) 350,000円
雑損・医療費・小規模企業共済等掛金控除・配偶者特別控除 控除相当額

出典: 茅ヶ崎市 児童扶養手当

これらを計算して出した所得額が、制限額以下であれば問題なく受給できます。

2-3.世帯分離は関係ない場合がある

そもそも世帯分離とは、1つの家に同居しながらも住民票の世帯を2つに分けることです。主に所得が少ない親の住民税を軽減する目的で行われます。

では、世帯分離をしていれば同居している親や兄弟の所得を考慮しなくていいかというと、そうではありません。

基本的には、住民票の世帯を2つに分けていても同居しているかどうかについては客観的に判断され、親や兄弟の所得も考慮されます。
実際に長野県須坂市のホームページには「住民票上世帯分離をしていても、児童扶養手当では同居となります。」と書いてあります。 どう判断されるかについては、各自治体によって異なりますので、世帯分離している場合はまず自治体に相談してみましょう。

出典: 長野県須坂市 よくある質問

2-4.遺族年金等受給者は一部支給がある

2014年以前は遺族年金や障害年金等の公的年金を受給している方は、児童扶養手当を受給することができませんでした。

しかし現在は、公的年金額が児童扶養手当額よりも低い場合に限り、差額分を児童扶養手当で受給できるようになっています。

ただし、児童扶養手当の月額よりも公的年金の月額の方が多い場合には児童扶養手当を受給することができません。 公的年金を受給している方は、児童扶養手当を受給できるかどうか各自治体にご相談ください。

3.親と同居しているシングルマザーが児童扶養手当を受けられるパターン

ではここからは、実家暮らし等で親と同居しているシングルマザーが、どのような場合に児童扶養手当を受けられるのかご紹介します。 親と同居していても児童扶養手当を諦める必要はありませんので、ぜひ参考にしてみてください。

3-1.同居している扶養義務者の所得が制限額未満の時

まず1つ目が、同居している家族(扶養義務者)の所得が所得制限額を超えないときです。現在の所得限度額は以下の通りです。

所得ベース
扶養人数 手当の全額を受給できる申請者の所得 手当の一部を受給できる申請者の所得 配偶者・扶養義務者・孤児等の養育者の所得
0人 490,000円未満 1,920,000円未満 2,360,000円未満
1人 870,000円未満 2,300,000円未満 2,740,000円未満
2人 1,250,000円未満 2,680,000円未満 3,120,000円未満
3人 1,630,000円未満 3,060,000円未満 3,500,000円未満
4人 2,010,000円未満 3,440,000円未満 3,880,000円未満
5人以降 1人増えるごとに380,000円加算 1人増えるごとに380,000円加算 1人増えるごとに380,000円加算

収入の目安
扶養人数 手当の全額を受給できる申請者の所得 手当の一部を受給できる申請者の所得 配偶者・扶養義務者・孤児等の養育者の所得
0人 1,220,000円未満 3,114,000円未満 3,725,000円未満
1人 1,600,000円未満 3,650,000円未満 4,200,000円未満
2人 2,157,000円未満 4,125,000円未満 4,675,000円未満
3人 2,700,000円未満 4,600,000円未満 5,150,000円未満
4人 3,243,000円未満 5,075,000円未満 5,625,000円未満
5人 3,763,000円未満 5,550,000円未満 6,100,000円未満
出典: 茅ヶ崎市 児童扶養手当

先ほどの例で言えば、あなた・子ども・父・母・兄の5人で暮らしていて扶養人数が子ども1人である場合、あなたの所得が87万円未満であれば全額支給、87万円以上230万円未満であれば一部支給で受給することができます。

しかし、扶養義務者である父・母・兄全員の所得が350万円を超えている場合、児童扶養手当を受けられません。

これが、実家で親と同居していると児童扶養手当を受給するのが難しくなる理由です。これに養育費が加算されたりすると、さらに受給するのが難しくなってしまいます。

3-2.自治体が世帯が分かれていると判断した時

シングルマザー(母子家庭)が、親と同居していても児童扶養手当を受給できる2つ目のパターンは、各自治体が世帯が別れていると判断した場合です。

先述した通り、世帯分離をしても同居している場合、基本的には同居していると判断されます。これは、親と同居することで家賃などの費用を支払う必要がなく、サポートを受けていると判断されるからです。

しかし、そんな中自治体によって世帯が分かれていると判断される場合があります。
それが、世帯分離をしているだけではなく、玄関やお風呂が2つあって電気・水道・ガスなどの光熱費を別々で支払っている場合です。
新しく家を建て替えて、電気メーターなどを2つ付けるのはかなり難しいと思いますので、今現在そういった2世帯住宅で暮らしている方は参考にしてみてください。

ただし、1つ気をつけなければならないのは、ここまで客観的に違う世帯だとしても、最終的に児童扶養手当の支給対象になるかどうかの判断は各自治体によります。 まずはお住まいの地方自治体にご相談ください。

3-3.両親を扶養に入れられる時

次にご紹介するのは、両親を扶養に入れることが可能な場合です。

例えば、あなた・子ども・父・母・兄の4人で同居していて両親を扶養に入れた場合、扶養人数が子ども合わせて3人となるので、あなたの所得が163万円未満・兄の所得が350万円未満であれば児童扶養手当を受給することができます。

児童扶養手当は扶養親族の人数が増えれば、所得制限額が上がるため、両親を扶養に入れるというのも1つの手です。

親を扶養に入れるには、以下の条件を全て満たしている必要があります。
● 納税者である子と生計を一にしている
● 年間の合計所得が48万円以下である
● 所得が給与のみの場合は給与収入が103万円以下である
● 青色申告者の専業従事者としてその年間は1度も給与を受け取っていない、または白色申告者の専業従事者ではない
ご自身の家庭状況と照らし合わせて、ご確認ください。

出典国税庁 扶養控除

3-4.両親の扶養家族が多い時

両親がまだ仕事をしている場合、あなたや兄弟姉妹を両親の扶養に入れることで、所得制限限度額が上がり受給できるようになります。

例えば、あなた・子ども・父・母・兄の4人で同居していて、あなた・子ども・母が父の扶養に入った場合、父の所得が350万円未満であれば受給可能です。
さらに、扶養に入れる条件にあった「納税者である子と生計を一にしている」の部分に関しては、定期的に仕送りをしていれば生計を一にしているとみなされます。 ですから、あなたの祖父母が父の扶養に入ることができれば、さらに限度額が上がり、児童扶養手当が貰える可能性は高くなります。

今一度扶養人数の計算をしてみてください。

4.親と同居していて児童扶養手当が打ち切られるケース

これまでに紹介した方法で児童扶養手当を受給していた場合でも、突然児童扶養手当が打ち切られてしまうケースがあります。

それが、両親の退職金等で一時的に所得制限限度額をオーバーしてしまう場合です。

児童扶養手当が受給できるかどうかの判断は、あくまで所得の部分にあり、所得制限限度額以内であれば受給することが可能です。
しかし、一時的だとしても所得制限限度額をオーバーしてしまうと、手当を受給できなくなってしまいます。
その場合、親との同居を解消するなどしなければなりません。

5.親と同居しても他の手当や支援制度は受けられる?

ここまでは、親と同居しているシングルマザー(母子家庭)の児童扶養手当の受給要件などについて解説してきました。

ここからは、シングルマザー(母子家庭)が受けられる、児童扶養手当以外のその他の制度について、親と同居していることで影響があるのかご紹介します。

5-1.医療費助成制度

日本における医療費助成制度は、「ひとり親家庭等医療費助成」と「こども医療費助成制度」の2つの制度があります。

どちらも、親と同居していても受けられる手当なので、ぜひご活用ください。

ひとり親家庭等医療費助成は、子どもの治療費だけでなく保護者の治療費に関しても、自己負担金を自治体が支払ってくれる制度です。一方、こども医療費助成制度は子どもの医療費に対する支援制度となります。
どちらも各自治体によって、対象者や自己負担金が異なりますので、自治体の窓口にてご確認ください。

5-2.保育料負担軽減制度

その名の通り、保育料の負担を軽減する制度のことです。基本的には、保育料を1度支払った後に過払い分が還付されるという仕組みです。

支給要件や支給額等は各自治体によってさまざまですが、住民税課税世帯なのか住民税非課税世帯なのかで支給額が異なる場所が多いので、親と同居する場合支給額が変わる可能性があります。
ここでは板橋区の例をご紹介します。板橋区では0〜2歳児クラスの場合、以下の金額を助成してもらえます。

区分 住民税非課税世帯 住民税課税世帯
第1子 第2子 第3子以降 第1子 第2子 第3子以降
月額上限額 25,000円 40,000円 54,000円 67,000円
出典:令和4年度認証保育所等保育料の負担軽減助成制度について

5-3.住宅手当

各自治体が定めている条件に当てはまれば、家賃や初期費用の一部を自治体が負担してくれる制度です。シングルマザー(母子家庭)以外でも手当を受けることができます。

親と同居していても手当を受けられますが、基本的に世帯の所得金額の上限がありますので、親と同居すると所得が増えて住宅手当を受けられなくなる可能性があります。

ここでは、目黒区の家賃補助制度であるファミリー世帯家賃助成をご紹介します。この制度を受けるには、以下の所得条件に当てはまる必要があります。

世帯人数 年間所得合計
2人 524.4万円以下
3人 572.4万円以下
4人 620.4万円以下
5人 668.4万円以下

他にも以下の条件に当てはまる必要があります。
● 18歳未満の子どもがいる
● 区内に1年以上住んでいる
● 賃貸契約者が本人または配偶者
● 家賃の支払いが本人または配偶者
● 家賃が5〜18万円の賃貸物件に住んでいる
● 家賃や住民税を滞納していない
● 確定申告で家賃の一部を経費計上していない
● 生活保護や公的補助を受けていない
これらの条件に当てはまれば、最長3年間毎月2万円の手当を受けることが可能です。

参考: 出典目黒区 ファミリー世帯家賃助成

5-4.障害児福祉手当

精神または身体に重度の障害を有するため、日常生活において常時の介護を必要とする状態にある在宅の20歳未満の方に支給される手当です。

支給額は月額14,850円となっていて、児童扶養手当と同じく受給資格者と扶養義務者の前年の所得が一定額以上の場合は支給されない手当となっています。障害児福祉手当の所得制限限度額は以下の通りです。

扶養親族等の数 受給資格者本人 受給資格者の配偶者および扶養義務者
所得額 収入の目安 所得額 収入の目安
0 360.4万円 518万円 628.7万円 831.9万円
1 398.4万円 565.6万円 653.6万円 858.6万円
2 436.4万円 613.2万円 674.9万円 879.9万円
3 474.4万円 660.4万円 696.2万円 901.2万円
4 512.4万円 702.7万円 717.5万円 922.5万円
5 550.4万円 744.9万円 738.8万円 943.8万円
参考: 出典厚生労働省 障害児福祉手当について

5-5.生活保護

生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立することを目的としている制度です。

生活保護を受給するには、以下の4つの条件を満たす必要があります。
1. 資産がない
2. 働くことができないもしくは能力に応じて働いていること
3. 他の制度を受けても最低限の生活が難しい
4. 親族等から援助を受けられないもしくは受けても最低限の生活が難しい

これらの条件を満たした上で、最低生活費から世帯収入を差し引いた金額を受給することができます。

ですから、シングルマザー(母子家庭)で親と同居していたとしても、世帯収入が最低生活費より低ければ受給可能です。最低生活費については各自治体によって異なりますので、窓口などでご確認ください。

また、生活保護については、シングルマザー(母子家庭)の生活保護の金額や条件と申請方法で詳しく紹介しております、ご覧ください。

5-6.国民健康保険の免除

前年の合計所得が一定以下の場合、国民健康保険料を免除・減免することが可能ですが、こちらも世帯の基準所得を下回った場合に利用できる制度です。

親と同居している場合、親の所得も含めて計算するのでご注意ください。


6.まとめ | 親と同居しても支援支援制度は受けられられる、ご自身の状況を確認しましょう

ここまで、シングルマザー(母子家庭)の方が親と同居した場合、児童扶養手当等の制度を受けられるのかについて紹介してきました。

実家で暮らすなどして親と同居する場合、手当を受けられるかどうかは、世帯もしくは扶養義務者の所得で判断されます。

どの制度も制限額以下であれば利用できますので、ご自身の状況と照らし合わせてご利用ください。

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