シングルファザー(父子家庭)でも養育費を受け取れる?実態と未払いの対処法を解説

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シングルファザー(父子家庭)でも養育費を受け取れる?実態と未払いの対処法を解説

子どもを1人育てるのに2000万円以上がかかると言われている今の時代、女性より男性の方が所得が多いとはいえ、ひとり親で子どもを育てるのは父子家庭でも大変です。

離婚してひとり親になったシングルファザー(父子家庭)の場合、養育費を受けられるか否かで育てやすさや教育の自由度が全く違うのも事実です。

そこで今回は、父子家庭の養育費の実態と養育費を受給するために離婚時にしておくべき取り決め等についてご紹介します。養育費の未払いに対する対処法もご紹介するので、今現在受け取っていない方もぜひ参考にしてください。



1.そもそも養育費とは?

    

父子家庭における養育費の実情を知る前に、そもそも養育費とはどういったものなのかご紹介します。

養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用のことです。子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する費用で、養育費には以下のようなものが含まれます。
● 衣食住に必要な経費
● 教育費
● 医療費

養育費は子どもを監護している親が他方の親から受け取れるもので、離婚しているとしても子どもの親は支払い義務を負う決まりがあります。 養育費をもらうまでの流れは以下の通りです。
1. 離婚
2. 養育費に関する取り決め
3. 実際に養育費を受給する

取り決めとは、養育費の金額・支払期間・支払時期(毎月28日など)について決めることです。離婚の際、同時に養育費の取り決めをすることも可能です。

出典法務省 養育費

1-1.養育費の決め方

基本的に養育費は、親同士の話し合いによって決めます。しかし、ここで注意しなければならないのが、法律は養育費を支払う義務は定めていますが、具体的に〇〇万円支払わなければならないという金額は定めていません。

つまり、養育費の金額については親同士が自由に決められるということです。
この際、「養育費算定表」という東京・大阪の裁判所が定めたものを参考に決める場合が多くなっています。

話し合いが進まない場合については後述しますが、親同士の話し合いが基本になる以上、養育費について知っておいて損はありません。

2.父子家庭における養育費の実態

2-1.父子家庭でも養育費を受け取れるのか?

結論から言えば、シングルファザー(父子家庭)でも養育費を受け取ることができます。養育費を受け取れるかどうかに性別は関係ありません。

しかし、母子家庭と比べると父子家庭の方が金額が低い傾向にあります。なぜなら、先ほどご紹介した養育費算定表による養育費の決め方には親の年収が関係するからです。
平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告によると、父子家庭世帯と母子家庭世帯の収入には以下のような格差があります。

収入種別 父子家庭 母子家庭
勤労収入 398万円 200万円
平均収入 420万円 243万円
世帯収入 573万円 348万円

父子家庭と母子家庭の手当等も含めた世帯年収には120万円以上の差があるため、家庭にもよりますが、受け取れる養育費は変わってくる傾向にあるのです。

2-2.母子家庭と比べる父子家庭の養育費受給率

先ほどご説明した通り、シングルファザー(父子家庭)でも養育費を受け取る権利があります。では、日本の父子家庭のうち、どれくらいの家庭が養育費を受給しているのでしょうか。

厚生労働省の調査によると、平成28年度の父子家庭の養育費受給率は3.2%でした。つまり、100家庭のうち3家庭しか養育費を受け取っていないという状況です。

ちなみに、母子家庭の養育費受給率は24.3%となっているため、比較すると父子家庭の受給率は母子家庭の8分の1ほどとなっています。
父子家庭の受給率が低い理由は、そもそも取り決め率が低いからです。平成28年度のひとり親世帯の養育費に関する取り決め率は以下の通りです。

父子家庭 母子家庭
取り決めをしている 20.8% 42.9%
取り決めをしていない・不詳 79.3% 57.1%

取り決め率に関しても父子家庭の方が低く、母子家庭と比べると約半数となっています。養育費に関してきちんと話し合いを行っていないのですから、養育費の受給率が低いのも当然の話です。

では、なぜ取り決め率が低いのでしょうか。父子家庭の父が取り決めをしていない理由は以下となります。

取り決めをしない理由 割合
相手に支払う能力がないと思った 22.3%
相手と関わりたくない 20.5%
自分の収入等で経済的に問題がない 17.5%
相手に支払う意思がないと思った 9.6%
取り決めの交渉をしたが、まとまらなかった 8.3%
子どもを引き取った方が、養育費を負担するものと思っていた 7.0%
相手に養育費を請求できることを知らなかった 0.4%
現在交渉中又は今後交渉予定である 0.4%
取り決めの交渉がわずらわしい 0.4%
相手から身体的・精神的暴力を受けた 0.4%
その他 5.2%
不詳 7.9%

母子家庭の取り決めをしない理由と比べると、父子家庭では「自分の収入等で経済的に問題がない」という理由が多くなっていました。

しかし、例えば養育費を毎月1万円受け取れるとすれば、10年で120万円となります。その金額分を子どもの教育に使えると思えばかなり大きいはずです。

養育費の話し合いはお金のことなので揉めることも多いのですが、子どものためにもまずは取り決めを確実にしましょう。

3.父子家庭がもらえる養育費の相場

では実際にどれくらい養育費をもらえるのでしょうか。養育費の相場についてご紹介します。

厚生労働省の調査によると、養育費を受給している父子家庭の平均月額は子どもの数別に以下の通りとなっています。

総数 1人 2人 3人
平成23年 32,238円 28,125円 31,200円 46,667円
平成28年 32,550円 29,375円 32,222円 42,000円

子どもの数によって養育費に差がありますが、平成28年度の時点では月額平均32,550円を受給しているという結果でした。つまり、父子家庭における養育費の相場は3万円程度となります。

これを見ているシングルファザー(父子家庭)の方は「自分の収入で子育てには問題がない」と思っているかもしれません。しかし、月額3万円を受給できるとなると年間36万円、10年で360万円にもなります。

出典:平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告

3-1.養育費はいつまでもらえるのか

先述した通り、養育費は子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する費用です。つまり「子どもが成人するまで」が養育費の支払期間となります。

ただし、基本的には親同士の話し合いによって決定されるため、高校を卒業する18歳までなのか大学を卒業する22歳までなのか、20歳までなのかはケースバイケースとなります。

親同士の話し合いで決まらず、裁判所に判断を任せる場合は20歳までもらえるのが一般的です。ただし、2022年の民法改正で成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたため、この先18歳に引き下げられる可能性もあります。

4.養育費受給のために離婚時にするべき取り決めの方法

養育費を受給するために、何よりもまず養育費をどれくらい受け取るのか、いつ受け取るのか、いつまで受け取るのかの取り決めをする必要があります。

ここでは取り決めの方法を3つご紹介します。ポイントはなるべく書面で作成することです。

4-1.離婚協議

まず1つ目が、離婚協議です。少し難しい言い方ですが、簡単に言えば親同士の話し合いのことを離婚協議と言います。

離婚協議の場合、取り決めの方法が2つに分かれます。
● 親同士の口頭合意
● 合意書面の作成

弁護士等に依頼しない場合でも、なるべく書面を作成しておきましょう。書面があるということは、養育費の合意の証拠があるということです。

書面を作成しておけば契約が交わされた証拠があるので、書面通りの支払義務が生じ、支払われない場合に強制執行できます。
ご自身で書面を作成することも可能ですし、不安な方は弁護士事務所に相談すれば離婚協議書という形で正式な書面を作成してもらうこともできます。

ご自身での作成の際は、法務省が養育費の合意書のひな型を公開していますのでぜひご利用ください。

4-2.公証人役場での公正証書作成

公正証書とは、公証人役場という場所で作成される正式な契約書のことです。もし公正証書の合意に違反があれば強制執行できますが、離婚協議や次にご紹介する裁判所での手続きよりも費用がかかってしまいます。

公正証書の作成費用は以下の通りとなっています。

目的の価額 手数料
100万円以下 5,000円
100万円を超え200万円以下 7,000円
200万円を超え500万円以下 11,000円
500万円を超え1000万円以下 17,000円/td>
1000万円を超え3000万円以下 23,000円
3000万円を超え5000万円以下 29,000円
5000万円を超え1億円以下 43,000円

出典:日本公証人連合会

例えば、毎月3万円の養育費を20年支払う内容の公正証書を作成する場合、20年の総計で720万円の支払いとなります。ですから、公正証書作成の手数料は17,000円です。

4-3.家庭裁判所での調停

公正証書の作成も離婚協議での決定も、どちらも親同士での合意が前提となります。話し合いで養育費の内容が決まらない場合は、家庭裁判所の調停手続を経て取り決めをする方法があります。

調停は、当事者である親同士と調停委員が仲介して行われます。あくまで話し合いで行われるため、どちらかの親の希望が全て通るわけではありません。

費用は、収入印紙1,200円(子ども1人につき)+郵便切手1,000円となりますので、子どもが1人なら2,200円です。もし弁護士に調停の代理人を依頼する場合は、その依頼料も加算されます。弁護士に依頼しない限り、調停の日に裁判所に行かなければなりません。

家庭裁判所で行われた調停に対して違反がある場合、家庭裁判所による履行勧告・履行命令の手続き、もしくは地方裁判所による強制執行の手続きを取ることができます。

公正証書や離婚協議書と同じく、最終的に強制執行もできるメリットがあります。

5.養育費の未払いに対してはどうすればいいのか

ではここからは、さまざまな方法によって取り決めをしたのにも関わらず養育費を支払われない、いわゆる未払いの対処法についてご紹介します。

5-1.まずは相手に相談してみる

養育費がどれだけ支払われていないかの程度にもよりますが、相手が振込を忘れているだけだったり、仕事で忙しくて対応できなかったり、色々な理由で未払いとなっている可能性があります。

いきなり強制執行等の手段を取ってしまうと、今後の関係にヒビが入ってしまう可能性もありますので、まずは相手に相談するのがおすすめです。

また、この際の手段は電話でもメールでも構いません。

5-2.内容証明郵便を出す

仮に相談すらもできない、したくないという場合には書面を内容証明郵便で出す方法があります。

内容証明郵便とは、どんな手紙の内容が、いつ、誰から誰宛に差し出されたのかということを郵便局が記録して証明してくれるサービスのことです。

つまり、相手が「養育費に関する手紙は受け取っていない」と言っても、郵便局に内容証明郵便の証拠が残っているためその主張は認められません。

1行20字以内・1枚26行以内・1枚520字以内という制限を守れば、ご自身で作成することが可能です。費用も基本料金+一般書留の加算料金+内容証明の加算料金(440円・2枚目以降は260円増)なので、比較的安く済ませることができます。

出典:郵便局 内容証明

5-3.家庭裁判所の制度を利用する

養育費の取り決めを家庭裁判所でした場合、家庭裁判所の履行勧告・履行命令の制度を利用することができます。

履行勧告とは、約束事を守らない相手に家庭裁判所から義務を実行するように伝えて督促してもらえる制度のことです。強制的に支払いをさせることは不可能ですが、ある程度の効果は期待できます。

履行命令とは、履行勧告でも支払われない場合、家庭裁判所が一定の時期までに支払うように命令を出してもらう制度のことです。履行命令に従わない場合、10万円以下の過料(前科がつかない罰金のようなもの)の制裁があります。履行勧告よりは強制力が強くなる制度です。

家庭裁判所の履行勧告・履行命令制度は、どちらも手続き費用がかからないというメリットがあります。

5-4.強制執行の手続きを取る

債務名義と呼ばれる強制執行力のある書面があり、地方裁判所に申し立てをすれば、強制執行の手続きを取ることができます。

強制執行力のある書面には以下のようなものがあります。
● 確定判決
● 和解調書
● 公正証書
● 調停調書
● 審判調書

公証人役場や家庭裁判所で書面を作成せず、ご自身で書面を作成した場合、家庭裁判所に合意書を提出し確定判決を得れば強制執行が可能となります。

強制執行では相手の給与や財産を差し押さえることになりますが、給与で差し押さえられるのは手取りの2分の1までという決まりがあります。給与が66万円を超える場合は、33万円を控除した残額を差し押さえることができます。

養育費の未払いを原因とする差し押さえは、一度の手続きで将来の分まで差し押さえることが可能です。

ただし、強制執行は財産がある場合には一定の支払いが期待できますが、支払い能力がない場合は期待できないのでご注意ください。あくまで、支払い能力があるけれど支払わない場合のみ可能となる対処法です。

5-5.公正証書などが無い場合の対応方法

公正証書などの強制執行力を持った書類がない場合に強制執行手続きをするためには、まず債務名義を取得しなければなりません。

しかし、債務名義の取得には時間も費用もかかってしまうことが大半です。

そこで、裁判所から支払いに応じるように命令をしてもらう支払督促の申し立てをすることで「仮執行宣言付支払督促」という債務名義を取得することができます。この方法であれば、費用も時間も公正証書や家庭裁判所での調停よりかかりません。

5-6.弁護士に相談してみる

ここまで、養育費の未払いに対してさまざまな対処法をご紹介しましたが、最終的には弁護士に相談するのがおすすめです。

養育費の取り立ては法律の知識が必要となり、複数の対処法がある場合どの方法が適切なのかの判断が難しい場合があるからです。さらに、強制執行の手続きをするには、弁護士の職権が必要になる場合もあります。

弁護士に依頼する場合ある程度費用がかかってしまいますが、将来的に養育費を支払ってもらえるなら相談する価値はあると思います。

さまざまな弁護士事務所で、初回無料相談を行っていますので相談してみてください。

6.養育費の未払いに役立つ制度・サービス

ここからは、養育費の未払いが発生した際に役立つ制度やサービスを民間のサービスと自治体に分けてご紹介します。


6-1.民間の養育費保証サービス

これは、未払いとなった養育費を運営会社が保証するサービスです。養育費の保険のようなものです。

養育費保証サービスを行っている会社に保証料を支払うことで、未払いとなっている養育費を保証してもらうことができます。

保証料は企業によってさまざまですが、月額養育費の1ヶ月分のところが多いので参考にしてみてください。

未払いの際に保証してくれる嬉しいサービスですが、保証金額に上限があったり、保証期間に上限があったりする企業も多い点には注意が必要です。

6-2.自治体の立替払い制度

自治体の立替払い制度は、養育費を支払わない相手の代わりに自治体が支払ってくれるわけではありません。あくまで、民間の養育費保証サービスの保証料を自治体が立て替えてくれる制度になっています。

例えば、以下の自治体で立替払い制度が行われています。
● 北海道札幌市
● 宮城県仙台市
● 埼玉県さいたま市
● 千葉県船橋市
● 東京都港区
● 東京都豊島区
● 神奈川県川崎市
● 神奈川県横須賀市
● 愛知県知立市
● 滋賀県湖南市
● 大阪府大阪市
● 兵庫県神戸市
● 兵庫県明石市
● 福岡県福岡市
● 福岡県飯塚市

大阪市では、保証会社と養育費の保証契約を結ぶ際の保証料を5万円まで補助する養育費の保証促進補助金という制度を設けています。

こういった自治体の立替払い制度を実施する自治体は少しずつ増えていますが、まだまだ少ないのも現状です。 まずは、ご自身の住んでいる地域に立替払い制度があるかどうかをご確認ください。

出典:大阪市 養育費の保証促進補助金


7.養育費に関する悩みの相談場所

シングルファザー(父子家庭)の方は、養育費に関してもその他の内容に関しても、さまざまな悩みが出てくると思います。

具体的な悩みであれば、弁護士に相談したり自治会に相談したりするのも良いですが、気軽な相談となるとなかなか難しいですよね。

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7.まとめ | 養育費受給に向けた壁を1つずつ解決していきましょう

ここまで、シングルファザー(父子家庭)の養育費の実態と養育費の取り決めや未払いの対処法についてご紹介してきました。

現在、養育費を受給している父子家庭はとても少ないというのが実情です。養育費の受給までにさまざまな壁があるかもしれませんが、1つずつ解決していきましょう。

なにか悩みや相談したいことがある場合は、ぜひ当サイトをご利用ください。

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